上毛三山のひとつ、榛名山の北東斜面に位置する伊香保は、群馬県を代表する温泉街。中心には伊香保のシンボルである石段街が佇みますが、その歴史はなんと戦国時代にまでさかのぼります。当時、この地を領有していた武田勝頼が、負傷した兵士の療養所を作るために町を整備したのがその始まり。源泉が高所にあったため、石段を設置し、そのなかに湯を導くための樋(とい)を通して温泉を流し、石段近くに建てられた湯宿へ引き湯をしたのです。とても合理的なシステムのため、伊香保温泉は「日本最初の温泉都市計画によって生まれた温泉街」とも呼ばれています。源泉には、茶褐色に染まった「黄金の湯」と、無色透明の「白銀の湯」があり、それぞれ「子宝の湯」「美肌の湯」と呼ばれるなど、効能豊かな湯として親しまれています。
石段は全部で365段あり、「登れるかな」と心配になりますが、昔懐かしい遊技場や足湯、おしゃれなカフェなどが点在しているので、寄り道していればあっという間。石段には見どころが多いので、ぜひ、時間をかけて、ゆっくり歩いてみましょう。ちなみに、365段の石段は「1年365日賑わってほしい」という縁起をかついで、この段数になったそうです。
歴史ある伊香保温泉は、竹久夢二、徳冨蘆花、与謝野晶子など、多くの文人墨客から愛されたことでも知られています。彼らの記念館もあり、秋の一日、アカデミックな気分に浸ることもできます。歴史ある湯宿には文豪が定宿にしていた宿もあるので、泊まってみるのも楽しいですね。
文/合津 玲子
- ACCESS
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●JR東京駅 ⇒
上越新幹線約50分
⇒ 高崎駅
⇒ 上越線約25分
⇒ 渋川駅
⇒ バス約30分
⇒ 伊香保温泉
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●JR新大阪駅 ⇒
東海道新幹線約2時間30分
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⇒ 上越新幹線約50分
⇒ 高崎駅
⇒ 上越線約25分
⇒ 渋川駅
⇒ バス約30分
⇒ 伊香保温泉
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伊香保のシンボルである石段街には、いろいろな楽しみが潜んでいます。
これだけ知っていれば失敗しない、石段街の歩き方をご紹介します。
石段をよく見ると十二支のプレートが見つかります。これは、かつて湯を引く権利を持っていた12の宿を表しています。自分の干支を見つけて写真を撮ればいい記念になりますね。また、与謝野晶子が発表した「伊香保の街」という詩が石段の側面に刻まれているので、ぜひ探してみましょう。
石段の頂上では、まず後ろを振り向き、はるか彼方に広がる上州の山々の絶景を楽しみましょう。その後は、垂仁天皇の時代の開基と伝わる歴史ある古社、伊香保神社でゆっくりお参りをし、朱色が美しい河鹿橋、源泉が飲める飲泉所などを巡りましょう。
石段街の名物「湯の花まんじゅう」は、実は“温泉まんじゅう”の元祖といわれています。黒糖の風味豊かなおまんじゅうは食べ歩きにもぴったり。また、半透明でコシのある麺が特徴の“水沢うどん”も伊香保に来たら味わいたい地元のグルメです。
石段途中にある温泉浴場「石段の湯」や、頂上部分にある「伊香保温泉露天風呂」では、伊香保温泉の源泉“黄金の湯”を楽しめます。また、石段街には2か所の無料の足湯もあり、こちらも源泉を引いているので、気軽に温泉を楽しめます。
古より多くの芸術家や文豪に愛されてきた伊香保温泉。
ゆかりの作家の記念館や最先端アート、絶景などで秋の一日をのんびり過ごしましょう。
大正ロマンの世界に浸る
竹久夢二伊香保記念館
大正時代を代表する叙情画家・竹久夢二が愛した伊香保に建てられた記念館。約1万坪という広大な敷地に「大正ロマンの館」「夢二黒船館」などがあり、美人画はじめ多彩な夢二作品が展示されています。
住所/群馬県渋川市伊香保町544-119
電話/0279-72-4788
料金/普通券1800円
時間/当面の間、本館のみ10:00~16:00(12:00~13:00は消毒作業のため閉館)
休館日/無休
現代アートに触れるひとときを
ハラ ミュージアム アーク
緑豊かな敷地内に3つの展示室と書院造をモチーフにした特別展示室「觀海庵(かんかいあん)」があり、国内外の優れた現代美術や東洋古美術を鑑賞できます。ハートをモチーフにしたジャン=ミシェルオトニエルの屋外作品「Kokoro」や草間彌生の「ミラールーム」は必見。
住所/群馬県渋川市金井2855-1
電話/0279-24-6585
料金/1100円
時間/9:30~16:30(入館は~16:00)
休館日/木曜日(祝日の8月除く)、展示替え期間、1月1日、11月4日~3月中旬(改修工事のため)
動物と遊んで元気になる
伊香保グリーン牧場
榛名山麓に広がる約40haの牧場でかわいい動物と触れ合い、アーチェリーやパターゴルフで遊べます。牧場の目玉、ダイナミックなシープドッグショーでは、羊と牧羊犬の見事な動きに目が離せません。
住所/群馬県渋川市金井2844-1
電話/0279-24-5335
料金/1300円
時間/9:00~16:00(入場受付は~15:00)、12月1日~2月末は10:00~16:00
定休日/1月上旬~2月末の平日(正月・祝日は除く)
上空から伊香保の絶景に癒される
伊香保ロープウェイ
温泉街の不如帰駅から標高955mの見晴駅までを4分で結ぶロープウェイ。見晴駅近くの上ノ山公園には「ときめきデッキ」という展望台があり、赤城山・谷川岳の壮大なパノラマが一望できます。
住所/群馬県渋川市伊香保町伊香保560-1
電話/0279-72-2418
料金/往復830円
時間/9:00~17:00の15分間隔(上り最終16:45)
定休日/無休(点検休あり)
伊香保の湯は、高台にある源泉が石段を下りながら各宿に供給されてきました。
石段街沿いに佇む源泉自慢の宿でゆったり過ごしましょう。
青畳の薫り漂う和のしつらえに
心がほぐれるひととき
お宿 玉樹
石段街の入り口にある、木の温もりにあふれた純和風温泉旅館。全室ゆったりとした客室でくつろげます。大浴場「榛栗(はしばみ)の湯」「玉伊吹の湯」では、それぞれ“黄金の湯”“白金の湯”が楽しめるのもうれしいところ。
住所/群馬県渋川市伊香保町伊香保87-2
電話/0120-41-8054
料金/1万7000円~(1泊2食付)
文豪・徳冨蘆花が定宿にした
伝統とモダンが融合した宿
ちぎらじんせんてい
千明仁泉亭
約500年の歴史ある和の風情とモダンなしつらえがマッチした館内はとても優雅。「黄金の湯」に浸かったら、部屋から望める上州連山に癒されるひとときを。宿泊客はもちろん、観光途中にも立ち寄れるカフェバーも併設。
住所/群馬県渋川市伊香保町伊香保45
電話/0279-72-3355
料金/1万6000円~(1泊2食付)
たっぷりの湯と旬の料理が楽しめる
竹久夢二も愛した名旅館
岸権旅館
創業は1576年という伊香保屈指の老舗。今年リニューアルし、さらにグレードアップしました。440年以上湯を守り続けた宿だけあって湯力は圧倒的。旬の料理がいただける和食会席も絶品です。
住所/群馬県渋川市伊香保町伊香保甲48番地
電話/0279-72-3105
料金/1万6500円~(1泊2食付)