存続の危機を見事に逃れ
湯あかりの美景とともに全国区となった名湯
熊本県阿蘇の奥地、大分県との県境に位置する山間の小さな温泉郷、黒川温泉。田の原川に沿って約30軒の温泉宿が建ち並んでいます。江戸時代中期より湯治場として知られていた温泉でしたが、戦後になり、「露天風呂を集めた温泉の街」をコンセプトにPRしてきました。しかし、観光客は一向に増えず、存続の危機も多々あったといいます。その後1980年代に入ると、立て直しのために景観整備を行い、黒川温泉のすべての露天風呂が利用できる「入湯手形」を発行するなどを行った結果、観光客は増えていき、メディアにもどんどん取り上げられるように。現在ではその人気は全国区となりました。
黒川温泉が有名になった理由のひとつ、「湯あかり」は今年で10周年を迎えます。4月3日まで、日暮れから22時までのあいだは「鞠灯篭」が点灯され、幻想的な雰囲気に包まれます。昼間は入湯手形を片手に温泉巡りを楽しみ、夜は湯あかりの美しい景観を眺め、感動的なひと時を過ごしてみましょう。
文/清水由香利(RUNS)
効能/疲労回復、筋肉痛、美肌効果、など
入湯手形
小国杉の間伐材を利用し、地元の老人会によって手作業で作られる入湯手形。購入から半年以内までに3つの露天風呂巡りができます。総合案内所「風の舎」にて1300円で販売。
地蔵堂
温泉郷のいご坂下にあるお堂。ここには、温泉郷に伝わる逸話「身代わり地蔵」に登場する首だけのお地蔵様が祀られています。入湯手形の奉納場でもあります。
押戸岩の丘
南小国町の標高845mの場所にある9組の巨石群。シュメール文字が刻まれた「鏡石」などが人為的に配置された、先史時代の巨石文化遺産です。実写版映画『進撃の巨人』のロケ地にもなりました。
鍋ケ滝
高さ約10m、幅約20mの鍋ケ滝は、滝の裏側も眺めることができる小国町の名所のひとつ。阿蘇のカルデラを作った約9万年前の巨大噴火によってできたとされています。